2023/05/23
企業が稀に「増資」をする時があります。
増資とはその名の通り、新規に株式を発行して、資本金を増やそうとすることです。
企業は自社のサービスの質や量を向上させるためには、研究開発や設備投資が不可欠です。そのためには、より多くのお金が必要になります。
企業の資金調達方法には、大きく以下の2つがあります。
1)デットファイナンス:債権の発行、金融機関からの借入など
2)エクイティファイナンス:株式の発行
この2つの方法の大きな違いは、集めたお金の償還(返却)する必要の有無です。
デットファイナンスは借金であり、償還期限に利息を付けて借入金を返さなければなりません。
一方、エクイティファイナンスは出資をしてもらうものであるため、必要に応じて配当金を支払いますが、返金の必要はありません。
増資は、このエクイティファイナンスです。
増資の種類
増資には以下の3つの種類があります。
1)公募増資
2)第三者割当増資
3)株主割当増資
1)公募増資
新しく株主を募るものです。不特定多数の投資家に対して出資を要請します。
2)第三者割当増資
特定の企業に株式を買ってもらうものです。また、取引先や役員などに株式を発行することもあります。
3)株主割当増資
既存の株主に買ってもらうものであり、株主の構成は変わりません。
増資による株価の値下り
増資によって企業のサービスが向上し、それが売上のアップや、配当の増加に繋がるのであれば、株主にとってメリットが大きいように思えます。
しかしながら、増資をすると株式が希薄化することで、株価が下がりやすくなります。
例えば、PER(株価収益率)で見てみます。
仮に、A社は発行済み株式数が1,000万株、株価が1,000円、純利益は10億円だったとします。この場合、PERは以下になります。
・PER:(1,000万株×1,000円)÷10億円=10倍
PERの適正値は業種によってことなりますが、12~15倍です。現在の状態だと、A社の株は比較的割安と言えます。ここで、A社が公募増資として1,000万株を新たに発行したとします。すると、PERは以下に変わります。
・PER:(2,000万株×1,000円)÷10億円=20倍
増資をしたことで、PERは適正値を超える20倍になり、割高の水準に悪化します。
つまり、株式の価値が下がったことになります。一般的に、投資家は増資による株式の価値の低下を嫌がり、増資前に売ろうとするため、株価が下がる傾向にあります。
増資による株価の値上り
増資が必ず株価の値下げに繋がるとは限りません。
増資が株式を希薄化させるとしても、それにも増す会社の成長を好材料と判断されることがあります。増資がさらなる収益をもたらす要因になるとして、株価が値上がりした企業もあります。
増資は、企業が何をしたいのかによって、好材料にも悪材料にもなりえます。
単に、返済しなくて済むからといって増資をすれば株主から反発されます。明確なビジョンに基づいて増資をすれば、投資家は株式を購入し、株価は値上がります。